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新約幻想郷:序 ~ Selene's light 1

2013.07.14(Sun) | EDIT

(こちらは東方二次創作小説『新約幻想郷』の第一話です。第十回博麗神社例大祭で配布した『新約幻想郷 体験版』より一部抜粋して加筆しております)



 うっすら霞掛かった山々の合間から一筋の線が縦に延びている。藍と翠の境界に垂直な銀。生憎天気が良いのでよく見える。
 御柱【オンバシラ】。
 月まで届きそうな光の柱。
 地を這う者共が天へと昇るべく築かれる現代のバベルの塔。所謂軌道エレベーターというやつだ。
 人類が三度目の大戦争を乗り越え辿り着いた二十二世紀、俗に科学世紀、ではこうした棒切れがあちらこちらに突き立てられている。日本とて諸外国に後れを取られるわけにはいくまいと。ちなみに御柱、という愛称はこの地に古くから伝わる祭事に由来する。
 かつて高天原より到来した征服神は御柱を建て己が威光を示し、民はひれ伏した。その神話が今まさに再現されようとしていた。大戦で破壊された関東の復興、を標榜に京都政府が建てたそれを麓の人々は仰ぎ見る。まだ見ぬ宇宙、神の領域への憧憬をこめて。
 ところがそれを憎々しげに見つめる瞳もあった。山頂から覗く、紅よりも赤く燃える瞳。正確には塔の根元に広がっているであろう関東唯一のメトロポリス、第二新東京市を映して。目の持ち主にとっては生まれ故郷であり、捨てた故郷でもあった。
 怒れる瞳の少女は同色の髪をなびかせて、ただ前だけを見据えている。彼女にとって憎いのは愚者の驕りを暗黒の歴史を積もらせた塔や街に限らない。目に映る何もかもが憎くて憎くて堪らない。
 歪んだ世界、無力な自分。口元は歪み、拳に力が入る。
 この世で最も大切な人を失ってから三年。紅蓮の少女は今でも全身を真っ黒で包んでいる。

「魅魔様のいない世界なんか」

 滅んでしまえと呪詛を吐いて。

「魅魔様のいない世界じゃ」

 生きられないと悲嘆に暮れて。
 けれどパンドラの箱にも希望が残っていたように、彼女の鼻は懐かしき華の匂いを幽かに嗅ぎ取っていた。
 それに気付いたのは三日前。匂いの元を探って走り回ったのは言うまでもなく。山に登ったのもそれが仄かに残っていたからだ。しかし目的は未だ果たされていない。そう簡単にいくとも思っていない。
 とは言え諦めの二文字も無い。

「絶対に見つけるから、必ず」

 宣誓の言葉を胸に、彼女はバイクのエンジンを噴かす。やはり燃えるような深紅のカラーリングで、「霧ヶ峰」と書かれた黄色いステッカーがワンポイントを添えている。もう十数年前の骨董品だがよく整備されており、発進に支障はない。道らしい道も無いが、それでもなお支障はない。
 走り出した途端、車体が浮いた。
 科学世紀と呼ばれて久しい今日この頃でも、空飛ぶバイクなどは実用化に至ってはいない。幻想の産物でしかない。そんな非常識なファンタジーを具現化できるものがいるとすれば、魔法使いとでも呼ぶ他ないだろう。
 事実、彼女、魔理沙も魔法少女であった。
 槍に突き刺される月を後にし、魔動二輪車は日が昇る方へと降下する。魔理沙の髪は風を受けてもがき、光を受けて真っ赤に焼け爛れた。



 この村は包囲されている。
 北と東には見渡す限りの山が並び、南と西は湖に沈んでいる。周囲から隔絶された結果、一世紀前の文化レベルが保たれた。過疎寒村。人も老人と、変人と、廃人しかいない。
 お蔭様で違法改造した盗品を法定速度超えて飛ばしている、健康優良不良少女を咎めるどころか目撃する者さえいない。早朝の時間帯、人通りが少ないのは勿論だ。それでも平時は気難しい爺さんなんかに見つかって説教を食らうものだが、ここ最近はそれすらもなかった。
 閉ざされたはずの村から人が消えていく。それが理由だった。
 老人ばかりの村だ、皆鬼籍に入るのはそう遠くない未来の話。だがそれにしてはいささか性急すぎた。
 最初に消えたのは山入りに住む老夫婦とその息子だった。次の日には街中の方で工務店を営む四人家族が。その次の日には二世帯七人が。さらにその翌日に倍の人数の失踪者が出た。そして今も鼠算式に増え続けている。
 この異変に気付いた土着民達は口を揃えて言う、「神様の祟り」と。一方で神職の者はこう語る、「神隠し」と。そして魔理沙はこう感じていた、「あの時と同じ」と。
 だから彼女は探している。自分の家族を、連れ去った者を、手段を、場所を。

「魅魔様の魔力、日に日に濃くなっている。近い……きっともうすぐ」

 人が一人消える度に、人ならざる者の気配が忍び寄る。神か悪魔か妖怪か、あるいは魔女の。
 そう、包囲されてこの村は幻想になった。



「おはよう靈夢」
「おやすみ魔理沙」

 村の外れにある古びた神社。その境内に降り立った黒衣の魔法少女は、のろのろと箒を掃く紅白袴の巫女に出迎えられた。二人は同時に欠伸をする。

「布団敷いてあるから」
「有難うな」
「ご飯、食べる?」
「いい。すぐ寝る」
「いい天気よ?」
「夏だからな」
「あんたの頭は春ね」
「お互い様だぜ」

 他愛のないやりとりをしながら、魔理沙はバイクを停めて手水をすませる。それを横目でニヤニヤ眺めている靈夢がいた。

「お賽銭、今日は期待できる?」
「何言ってんだぁ、参拝しに来たんじゃないぜ。家に帰ってきたから手を洗ってただけだ」
「なーんだ」

 がっくりと肩を落とす靈夢。いつも同じ反応してよく飽きないなと魔理沙はいつも通り呆れてみせた。その度暢気な巫女さんはこう返す。

「わかってるけど、今日こそは、何か違うことが起きるかもしれないじゃない」
「それもそうだな」
「あら? そうね!」

 平時では「そうかもな」と答える魔理沙だが、ここ最近の異変を思えば肯定したくもなった。

「靈夢は靈夢のままだけどな」
「そう?」
「変わらず面白い靈夢でいてくれ!」
「何よ、からかってる?」
「からかってるよ」

 ケラケラ笑う赤毛の少女に向かって顔を真っ赤にした少女が突進する。だがあまりに動きがどん臭いので簡単にかわされてしまう。せっかくの綺麗なブロンドの髪も土に塗れて台無しである。
 してますます立腹する靈夢だが、そんな態度が余計魔理沙を喜ばすことには気づかない。そういう性質なのだ。

「そうそう、今回はどこまで行ってたの?」

 このまま手玉に取られたままでは癪なので靈夢は話題を切り替えることにした。

「山」
「山なんていっぱいあるじゃない。新東京の方?」

 あえて無視する魔理沙。

「今晩は第二諏訪湖の方へ行こうと思う」
「今晩はやめた方が良いよ」
「何でよ」

 露骨なくらい声色に不機嫌さが表れていた。

「何でやめなきゃいけないの? 靈夢は会いたくないの? 魅魔様に」
「私は……別にそんな……」

 捲し立てられて靈夢はたじろぐ。一歩下がる相手を逃さんと魔理沙は震える肩を掴んだ。

「別にいいのか? よくもそんなことが言えたもんだな! 仕方ないか靈夢は魅魔様と一緒だったの少しだもんな!」
「違う……そういうことじゃ……」

 涙を浮かべる靈夢を見て、魔理沙はハッと我に返る。そして即座に言い過ぎたと謝った。すると靈夢も平常を取り戻して言う。

「ただ、今晩理香子が帰ってくるから」
「理香姉が?」
「言ってたじゃない。週末外泊取れたって。なんか魔理沙に大事な用があるらしいよ?」
「私に? 何だろ」

 頭を掻きながら考え込む魔理沙。しばらくして眉を八の字に曲げて、その場にいない相手に頼むように言った。

「たいした用じゃないなら、パス、できません?」
「駄目だと思う。理香子だし」
「だよね。理香姉だし」

 深い溜息と共にわざとらしく肩を竦める魔理沙を、今度は靈夢が笑った。
 そんな時だ。鳥居の向こうに人影が現れた。滅多にない参拝客に気付いた神社の主は、魔理沙に箒を押し付けるとすたすた駆けていく。

「おはようございます。博麗さん」

 すらっと背の高い三十代前半くらいの女性が靈夢に挨拶を投げかける。その声と風貌は魔理沙にも覚えがあった。この村の長である。

「おはよう阿都。要件は何かしら」

 村長に向かって敬語を使わないのは一見変なようだが、この場合では合っている。実はこの神社、ただの神社ではなく、その巫女の権威は村長などよりもずっと上なのだ。もっとも靈夢は誰に対しても呼び捨てにするのだが。
 おそらく村長は仕事でここに来たのだろう。そして靈夢もこれから仕事を受けるのだろう、博麗神社の巫女として。それを察した魔理沙はそそくさとその場を離れ、本殿の裏にある住居に入ろうとする。
 直前、靈夢は魔理沙に何やら声を掛けようとしたが、この距離では届くはずもない。追い打ちをかけるように扉は二人を隔ててしまった。
 ガチャ。自動で施錠される。中に入ってすぐ、魔理沙の視界に一枚の写真が飛び込んだ。味気ない玄関に飾ってあるだけに否が応でも目立つ。
 写真は、所謂家族写真だ。映っているのは四人。
 母親、魅魔。
 長女、理香子。
 次女、魔理沙。
 三女、靈夢。
 家族と言えど血は繋がっていない。しいて靈夢が魅魔の遠縁にあたるくらいだ。髪の色もバラバラ。年も左程離れていない。けれども家族であることには変わらないのだ。少なくとも魔理沙にとっては。
 今でも鮮明に思い出すことができる、魔理沙はここに来た時のことを。神社の巫女は見ず知らずの放浪娘を泊めた上、事情を何も訊こうとしなかった。「魔理沙」なんて取って付けたような名前を名乗ったにも関わらず。
 ただ彼女、魅魔はこれだけはハッキリと言った。

「私はここにいるから。あんたもここにいていいんだよ」

 その瞬間魔理沙は泣き崩れた。自分が存在することを許されたのは初めてだったから、まさしく赤子のようにわんわん泣いた。あの日魔理沙は「魔理沙」として生まれたのである。だから彼女にとっての母親は、魅魔を置いて他にいない。
 母親としてはあまりにいい加減で、しょっちゅう悪戯するわ嘘吐くわ大人気ないわ偉そうに自分を様付けで呼ばせるわ、人間としても難のある人物。けれどもそんな魅魔が魔理沙は大好きで、大事な家族だった。
 それは他の二人にとっても同じ。

「よくもそんなことが言える? 何様だ。よくもあんなことが言えたものだ」

 魔理沙は自ら頬をはたく。先程靈夢に詰め寄った様子を頭に浮かべ、悔いた。
 実際靈夢が博麗神社の後継ぎとして引き取られたのは魅魔が失踪するほんの二か月前。対して魔理沙は約二年の時を共に過ごしている。だが時間など問題ではない、それを自分が一番わかっているはずで、わかっていなきゃいけないはずだったのだ。
 ところで靈夢に対する第一印象は「人形」だった。無言。無表情。無感情。それがどうだ。今ではあれ程感情豊かな人間などそうそういないぐらいだ。魔理沙は知っている。彼女が魅魔達と触れ合う中で少しずつ喜怒哀楽を手に入れていったことを。
 そんな靈夢が魅魔を失って悲しく思わないはずがない。事実あの日からしばらく泣いてばかりいた。そんな靈夢を見ているからこそ、何とかしようとしているんじゃないか。それなのに――

「余裕がないんだな、この馬鹿は」

 焦っている。そんな自分に魔理沙は一層苛立ちを感じる。三年間何も手掛かりを得られなかったところに異変だ。この機を逃せばと思うと居ても立っても居られない。
 けれど焦りは禁物。目的を果たすためには。母は娘達にそう教えていた。
 それでも失われた日々への憧憬は、失われた母への恋慕は、募るばかり――限界が近い。
 また四人で暮らす。それだけが今の彼女の望みであった。それ以外では幸福を享受できない。

「おやすみ」

 魔理沙は写真から視線を外し、一人寝室に向かった。たどたどしい足取りで。



 なんとなく胸周りに圧迫感がある。
 締め付ける、というよりは絡み付く、という感覚だ。気色悪い。自然と呼吸が荒くなる。触覚の次に襲われるのは嗅覚だ。ピリピリとした刺激的な臭いが鼻を犯す。
 それを魔理沙は、魔法臭いと認識していた。魔法と言っても自分が使う時には感じない異臭。人外の薫り。妖怪変化の自己主張。
 メトロポリスの科学信仰に染まった人間達は気付きもしないだろう。この村の人間達も直接感じ取れる者は少ないだろうが、人が消える度に得体のしれない恐怖を抱いている。そして魔理沙のような少女にはありのままにその姿を受け止められた。
 だからこそ気持ち悪く感じる。幻想が綺麗な物ばかりとは限らない。グロテスクな、剥き出しの、異常性が憑りつかんとする。それをギリギリで避けながら、魅魔の残り香を辿っていく。
 しかし空はまだ暗く、妖怪の天下だ。いつの間にか誘いこまれていた。だがかえって魔理沙にとっては好都合。生きた妖怪を捕まえて尋問してやると意気込んで、自ら飛び込んでいく。
 急に風の向きが変わった。魔理沙にはそれが妖力の質が変わった、と感じられた。臭いで言えば、魔法臭さとは別の臭いが混じり始めた。その異臭はどんどん比率を増していく。
 死臭。腐臭。むせ返るような嫌悪感が体を通り抜ける。発生源はもう近い。引き返したい、という気持ちが支配的になっていくが、足は反して前に進む。そしてついに視覚でも捉えらるところまで来た。
 天井は濃紺、周囲は深緑。だが眼前は鮮紅で染め上げられている。
 まるでオレンジの皮を剥くように。腹部を切り開かれた異形の少女が血の華を咲かせていた。
 魔理沙は思わず両手で口を押さえ胃の逆流をせき止めようとするが間に合わない。あまりに無残、と形容する他ない姿だった。胴体はそんな有様で両手足は細切れ。かろうじて原形を留めて転がっている頭部と目が合う。

「見るな……そんな目で私を、私を見るんじゃない……」

 山が震える。木の枝が軋む音はまるで御経を唱えているようだった。
 十代の少女には刺激的すぎる光景だ、気が動転しても仕方ない。だが魔理沙の場合不思議と落ち着きを取り戻すのは早かった。この年でもそれなりに場数を踏んでいるからかもしれない。
 おかげで辺りに散乱しているお札の存在にはすぐ気付けた。神社で見かける馴染みの物に相違ない。それこそこの少女だったらしきモノが人ではなく妖怪であることの証明であり、故にこうされたことを物語っていた。

「靈夢がやった、のか?」

 妖怪退治は博麗の巫女の仕事であり、代々受け継ぐ呪いだった。魔理沙も一度だけ先代巫女、魅魔が妖怪を滅するところを見ている。その時のことを思い出したから、一つ安心を得た。

「殺ってない……まだ生きてる」

 妖怪は死体を残さない。なぜなら彼らは人が生んだ空想上の化物なのであり、彼らにとっての「死」とは存在を否定されて消滅することだけを指すからだ。ならば目の前の妖怪少女はこれほどズタズタに体を裂かれていたとしてもまだ死んではいない――ことになる。

「私は見なかったからね、靈夢」

 魔理沙はそいつを見逃してやることにした。もしかするとこの妖怪が村人失踪事件の犯人かもしれないし、魅魔を奪った張本人の可能性だってある。妖怪というだけで人間にとっては危険な存在だ。
 それでも見逃したのは情に駆られたわけではない。生きてて貰わないと情報を引き出せない。それだけだと魔理沙は自分に言い聞かせた。
 目線を逸らした先に妙な物があった。魔理沙はふと気になってそれを拾い上げてみる。長さが三十から四十センチくらいの棒状の物で、ちょっとした装飾が施されている。彼女の知る限りでは「バトン」が一番それらしかった。
 絡み付くような感触。魔法臭い。明らかにただの棒切れではない。

「お前の……か?」

 返事があるはずもない。魔理沙はしばらく凝視した後、ぼそりと呟いた。

「ちょっと借りてくぜ」

 魔理沙はすっかりそれを気に入ってしまった。持ち帰りたくなった。彼女の悪癖である。
 追い剥ぎではない。借りるだけ。第一持ち主が違うかもしれないじゃないか。そう自分に言い訳して自己を防衛する。ほとんど無意識のうちに。自覚を持って反道徳行為を繰り返せるほど彼女の精神は強くはない。ただ嘘を吐くのに躊躇いはないのであって。
 もうこの場に用はないと魔理沙は振り返って駆け出す。
 その足は速い。あんな凄惨な現場から早々に立ち去りたい、ごく自然なことだろう。だが傍からは盗人の逃走にも見えた。
 呪詛が絡み付いて魔理沙の右腕を犯す。どれだけ逃れようとしても逃れる術はない。踏み込んだのは彼女が先なのであるから。できることがあるとすれば、それは嘘で誤魔化すくらいだろう。
 例えば、これは夢である、とか。

「なんだ、夢、か……」

 掛布団を裏返して、魔理沙は上体を起こした。窓から赤みを帯びた光が差し込む。時計は午後の五時を指し示していた。
 そうだ。朝方帰ってきて靈夢と話した後すぐ眠ったんだった。魔理沙は頭をボリボリと掻く。なんだ、と胸を撫で下ろしたその時、見覚えのある物が飛び込んできた。
 残骸の横に転がっていた、あの「バトン」だ。

「夢じゃ、ない?」

 魔理沙は驚愕する。ならいつのことだ? さっきまで寝ていたはずだ。そもそも夜の出来事だった。ならば神社に帰ってくる前だったか? だとすれば一つ辻褄が合わない。靈夢はその時間、神社で寝ていたはずだ。

「いや、まさかな……」

 靈夢が夜中に起きていて、こっそり妖怪退治を行っていた――これで説明はつく。本人に聞けば確証も得られるだろう。
 しかしなんとなく魔理沙には躊躇われた。あの靈夢に、無垢な靈夢に向かって「お前があの妖怪を切り刻んだのか」などと問うのは。
 ひとまず布団を片付けて魔理沙は部屋を出る。家中をさっと回ってみるが靈夢の姿はない。そこで神社の本殿の方にも行ってみるがやはり留守のようであった。
 靈夢と村長が会話している様子が思い出される。魔理沙は確証はないが確信はしていた。靈夢はすでに動いている。続いて血塗られたオレンジが思い出される。今もきっとどこかであんなことが。そして何故か、初めて出会った時の靈夢の、人形のような表情が思い出された。
 嫌な予感がする。魔理沙の胸に一抹の不安が纏わり付く。その底知れぬ気持ち悪さは、彼女から落ち着きを失わせるに十分値した。
 そのまま鳥居へ向かって駆け出す魔理沙。とにかく魅魔様を見つけないと。そうすればきっと靈夢だって……と勝手に結び付けて。だがそれは阻まれた。
 参道を降りようとした時、すれ違い様に頭上を鉄の塊が通過して、風に呷られて尻餅をついてしまう。

「うわっ!」

 驚いて後方を見やると、軽VTOL機が境内に着陸していた。この時代では旧世紀のヘリと同じ扱いであり、個人所有も許されている。そしてこの家でそんな物を乗りこなせるのは一人しかいない。

「げげ、理香姉!」
「何だその反応は。「お帰りなさいお姉様」でしょう? 可愛げのない奴め」
「お帰りなさいお姉様」
「ただいま魔理沙」

 ハッチが開いて中から長身の女性がふわっと飛び降りる。理香子はヘルメットを外すと、長い髪をはためかせた。



【次回予告】

進学を勧める姉、理香子。しかし魔理沙はそれを拒否する。
一人夜空を飛ぶ魔女を待ち受けていたのは、枯渇した湖、そして……
次回 「新約幻想郷:序 ~ Selene's light 2」 この次も、サービスサービス!

(次回更新予定は7/21です)
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Author:宇佐城
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