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U.N.オーエンは言った「誰そ彼?」 解

2012.12.10(Mon) | EDIT

(こちらは東方創想話ジェネリックに投稿したU.N.オーエンは言った「誰そ彼?」に麟の台詞等を追記したverとなっています)



CASE 0(1):彼女の場合

 ここには八人の少女がいた。
 彼女は七人に問うた。あなたはだあれと。そして八人に問うた。わたしはだあれと。



CASE 1(4):紅美鈴の場合

 ちょいとお待ちを、ここは関係者以外立ち入り禁止です。
(あなたはだあれ?)
 私ですか? 紅美鈴と言います。ここ紅魔館で番人をやっています。
(あなたは人間?)
 いいえ違います。こう見えてもれっきとした妖怪よ。というかここには人間なんて一人しかいませんし。
(あなたは何の妖怪?)
 さぁ、わかりません。門番の妖怪とかでいいんじゃないかしら、駄目?
(どうしてわからないの?)
 どうしてでしょうね。まぁどうでもいいことは忘れていくと言いますか。
(いつから妖怪?)
 いつの間にかこうですねー。細かい年代は忘れちゃいました。
(本当に妖怪?)
 いや、それは間違いないですよ。人間じゃないことだけは間違いない。
(どこからきたの?)
 海の向こうの出身ですよ、多分。ここに来る前のことは軒並みたいして覚えてなくて。あぁ一つだけ覚えてることがあるとしたら、戦争やってる時に上海の租界でお嬢様と出会ったことぐらいかしら。あれ、本当にあの時だっけ? ちょっと自信なくなってきた……。
(どうして覚えていないの?)
 う~ん、そりゃあ長く生きすぎているとある程度の忘却は仕方ないんじゃないですかね。和食派でもない限りパンを食べた枚数なんて覚えていられないでしょう?
(本当にそのせいだと言える?)
 何が言いたいのかしら。
(自分の正体さえ忘れるのはおかしくないの?)
 そんなにおかしいですかね。だから覚えていなくてもいいくらいどうでもいいことなのよきっと。自分が何者かだなんて、紅魔館の門番紅美鈴、それだけで十分なんですよ。それ以上でも以下でもない。
(本当に紅魔館の門番?)
 うっ確かに門番としての務めを完璧に果たしているかというとちょっと……でもですね! 私にとってその事実こそ真実なんですよ。番人でない私なんて紅美鈴じゃない。
(わたしはだあれ?)
 申し訳ないですが覚えがありません。でもどこか、私と似ているような気がします。気のせいかな? うーん……あれ? どこ行った?



CASE 2(5):小悪魔の場合

 おやおや、お客さんでしょうか。何用でしょう。
(あなたはだあれ?)
 教えられません。禁則事項です。
(どうして教えてくれないの?)
 真名を明かしていいのは契約したマスターに対してのみですから。ただ名無しだと不便でしょうから私のことは小悪魔とでもお呼びください。マスター以外にはそれで通っています。
(どうして小悪魔なの?)
 それはまぁ、悪魔の小間使いだからですよ。お恥ずかしながら非力故そうカテゴライズされているという面もありますがその。
(本当に小悪魔?)
 小悪魔じゃなくて大悪魔だったら良かったのになぁ、と思うこともやぶさかではないです。所詮妄想に過ぎませんがね。
(本当は名のある大悪魔なのでは?)
 もし私が七十二柱の一柱とかだったりするなら、こんなかび臭いところで働いているわけないじゃないですか。シンデレラじゃあるまいし。
(契約によって小悪魔にされているのでは?)
 契約の内容については口外を禁じられていますが、マスターの名誉のために言っておきますと、決して不当に貶められているなどということはありません。
(マスターに騙されているのでは?)
 契約は公平に行われます。良いように使われているように見えるかもしれませんが、私も同等の利益を享受していますから。仮に私がマスターの奸計によって小悪魔に身を堕としたとしてもそれで満足しているのならばノープロブレム。違いますか?
(さっき小悪魔でないことを望むようなことを言ったのに?)
 だからそんなのは絵空事なんですよ。ほら、隣の芝は青く見えるって諺があるじゃないですか。本気で思ってるわけないです。どうしようもなく私は小悪魔だし、それでいいです。
(わたしはだあれ?)
 自分が何者かわからないと。これは憶測ですけど、そういう類の契約を結んだがためなんじゃないですかね。



CASE 3(6):パチュリー・ノーレッジの場合

 門番もあの子もちゃんと仕事してたのかしら。知らないやつが入ってきてるんだけど。
(あなたはだあれ?)
 私はパチュリー・ノーレッジ。魔女よ。わかったなら邪魔だからとっとと消えて頂戴。
(あなたの本名は?)
 私にとってはソレこそが本名に他ならない。本名とはその者の本質を示す名。そうあるべきと考えるが?
(名前の由来は?)
 魔女たる私の生き方を表す名なの。日陰にて知識を求める、それが私。パチュリー・ノーレッジなの。ところで貴方、あくまでここに居座る気ね……
(どうして知識を求めるの?)
 愚問だわ。知的好奇心は本能よ。無知は知、ある意味そうかもしれないが無知のままでは何も満たしはしない。その点については同意を得られるのでは? 今まさに問いかけまわっている貴方にはね。
(どうして日陰にいるの?)
 だって普段は外へ出る必要ないもの。この図書館さえあれば事足りてしまうわ。
(閉じこもってどうやって知識を得るというの?)
 本を読めばいい。
(本だけで知識は得られるの?)
 そうよ。結局のところあらゆる知識は本に還元される。伝達には媒介が必要不可欠だから。実体験に基づく知識も本に書き残さねば消えてしまう。私達の記憶には限りがあるからね。勿論本も永久に保存できないから、劣化して読めなくなる前に書き写す必要があるけど。
(不老不死になればいいのでは?)
 不老不死ねぇ。寿命を延ばす努力はしてるし理論上不可能ではないけど、実際になってしまったなら逆に意味がないわ。
(どうして意味がないの?)
 死なない生命は生きてもいないから。永遠のアンビバレンス。生命ですらない、蓬莱の人の形。そんなものにとって知は無知。無価値。嫌よ私は、本を読み本を書くことに喜びを感じなくなるのは。そう、多分……貴方みたいに。
(わたしはだあれ?)
 さぁ? 悔しいけれど知らないわ。もしあなたが自分の正体を明らかにしたなら、その時は教えて頂戴。



CASE 4(7):十六夜咲夜の場合

 はぁ、貴方のせいでお掃除が進まないわ。お嬢様に怒られるのは私なのよ?
(あなたはだあれ?)
 私はここのメイド長、十六夜咲夜ですわ。以後お見知りおきを。
(あなたは妖怪?)
 いいえ違います。見ての通り人間よ。しかも異変解決を兼業としている幻想郷一のメイドなのよ!
(人間なのにどうしてここにいるの?)
 働かぬ者食うべからず。人間は食わずして生きてはいけない。私の場合たまたま天職が悪魔の屋敷のメイドだった、というだけ。
(本当に人間?)
 ええ。私以外は全員アレなので勘違いされがちですが。
(どうして人間なの?)
 そんなこと、人間に生まれたからに決まっていますわ。一生死ぬ人間であることに理由は必要でしょうか?
(本当はもう人間ではないのでは?)
 どうしてそう疑うのかしら。
(妖怪同様の暮らしをしているのに?)
 殺人鬼に向かってお前は人間じゃない悪魔だ、と言うようなものですか? それは主観的な見方に過ぎません。客観的に見れば人間の殺人鬼なら当然人間であるし、十六夜咲夜も人間ですわ。
(本当にあなたは十六夜咲夜?)
 おかしなことを訊きますね。私の呼び名はジャック・ザ・リッパーでもザ・ワールドでも何でもいいですけど、十六夜咲夜であることには変わりません。お嬢様の従僕である限り。
(本当にあなたの主人はお嬢様?)
 十六夜咲夜が仕える相手はレミリアお嬢様のみ。たった一つの、シンプルな答えですわ。私がどうなろうとそれが揺らぐことだけはない。
(その十六夜咲夜もすでにいないのでは?)
 目の前に立っているじゃあないの。貴方は目に見えるものさえ信じられない? もしかして最近私が異変解決に出かけていないから十六夜咲夜は消えた、などというくだらない噂を信じているのかしらね。確かにそっちの方はご無沙汰だけど、紅魔館のメイド長は健在よ。忙しすぎて子供のお遊びに付き合っていられないわ。
(わたしはだあれ?)
 貴方の謎を解くのに私の時間では足りないでしょう。でも、お嬢様ならあるいは……お取次ぎましょうか?



CASE 5(8):レミリア・スカーレットの場合

 ほう、運ばれて来たか。ファントム。
(あなたはだあれ?)
 高貴な私の名はレミリア・スカーレット。この館の主にして夜の王よ。畏れなさい。
(どうして館の主なの?)
 それは私がツェペシュの末裔たる名門の出ゆえ、紅魔館を受け継いだのも運命だった……わ。
(本当にツェペシュの末裔?)
 いきなり嫌なところに突っ込んでくるわね。私がブラド公の血を引くと言ったらそうなのよ。何か文句ある?
(あなたに家族はいるの?)
 時々四人に分身する妹が一人だけ。と言ってもほとんど会う機会のない妹だけど。
(どうして妹に会わないの?)
 あぁ、向こうが部屋に閉じこもって出てこないから。少々問題児でねぇ。
(あなたが閉じこめたのでは?)
 だとしたら、どうだというのかしら。
(どうして実の妹を閉じこめたの?)
 運命がそうさせたのよ。そしてそれは結果としてあの子を救うことになる。私はただ予定調和を目指して運命に介入したに過ぎない。私が妹を幽閉した、という事実にしか目を向けないのなら、こんなくだらない戯言をのたまうのも致し方なし、か。
(本当の妹ではないから閉じこめたのでは?)
 まぁ、想像力豊かだこと。でもねぇ、あんまり余所の家庭の事情に突っ込むと痛い目見るわよ。いや、すでに痛い目に遭っているわね。その調子じゃあ。
(わたしはすでに痛い目に遭ったの?)
 それを覚えていないということが痛い目に遭った何よりの証拠よ。そういう定めに従って。そんな残酷すぎるくらい無慈悲な運命を私は操り強いることができる。
(本当に運命を操ることができる?)
 懐疑することしかできない能無しには言っても無駄だろうけど、私が賽の目を決めていなければお前がこれまで付き合わせた相手は誰一人としてここにいないし、お前自身もここにいなかったね。
(わたしはだあれ?)
 私はお前の正体を教えることはない。そういう運命を仕組んでいるからよ。さようならファンタズム。二度と会うこともない。



CASE 6(9):フランドール・スカーレットの場合

 おまたせ。ようやくここまで辿り着いたね。
(あなたはだあれ?)
 人に名前を訊く時はって……あぁそうか。じゃあしょうがないか。フランドールよ。フランドール・スカーレット。吸血鬼にして魔法少女。それが私。
(レミリア・スカーレットの妹?)
 その通り、悪魔の妹と呼ばれているわ。でもあいつなんかお姉様じゃないんだけど。
(本当はレミリアの妹ではないの?)
 レミリアお姉様のことなんてどうでもいいから遊びましょ? 長年引き籠ってて退屈なの。
(どうしてここにいるの?)
 閉じこめられているから閉じこもっているの。
(どうして閉じこめられたの?)
 私の頭がおかしいからなんじゃないのー?
(どうして頭がおかしいの?)
 ここで私からのクエスチョン! 気がふれているから閉じこめられたか、閉じこめられたから気がふれたのか、一体どちらでしょう? ちなみに正解は私にもわかりません! ドカーン!
(どうしてわからないの?)
 そんなこと言ったって、本当に気がふれてたら自分が狂人だってわかるわけないもん。でもね、皆して私のことを狂ってるだの何だの言うけどさぁ、本当は皆の方が狂ってるからそう言うのかもしれない。私だけが正しくて外のモノ全てが間違っているから出してもらえないのかもしれない。この世に絶対的な真理なんて存在しない、というのが真理だからおかしいったらありゃしなーい。
(あなたの言うことがわからない)
 話が通じない? よく言われる。しかしあなたも大概よ。質問ばかりして、これじゃ会話じゃなくて問答じゃないの。でも初めて疑問じゃなくて意見したね。ちょっとは遊べそうなのかしら? きゅっきゅっきゅーのきゅー。
(わたしはだあれ?)
 U.N.オーエンよ。私なんかより全然……まぁ言ってもわからないか。いいわ、私やさしくないからヒントあげる。あなたは名前だけの存在なの。だからU.N.オーエンってわけ。なのにあなたという幻想が自我を持ってあたかも私達の目の前にいるよう歩き始めた。名前さえ失うことによってね。んーなんでそんなこと私が知っているかって聞きたい? そりゃあもう、あなたが名前以外を奪われたのは、名前以外のあなたの全てを破壊できたのは、この私を置いて他にいないはずだもの! あははははははははははははははは、ははは、はは……やっぱり人形かぁ……つまんない。あなたもう壊せるとこないからいらない。コンティニューして。



CASE 7(10):シ者(mima)の場合

 ふふっもう本編から外れたEXTRAの刻よ。あんた、まだ自分探ししてたの。
(あなたはだあれ?)
 あんたの先を逝く者よ。すなわちシ者。幽霊でも亡霊でも怨霊でも、幻想郷の神でも何でもどうぞ。ただし悪霊と呼ぶことだけは許さないから。
(あなたの名前は?)
 名前ねぇ、忘れたわ。あんたと同じね。キャラクターとしても死んでいるゴーストだから。
(本当にわたしと同じ?)
 あぁ、正確に言えば私とあんたじゃ些細でも決定的な違いがあるわね。
(どこが違うの?)
 私には復活する可能性が残されている。たとえそれが僅か0,00001%の確率であってもね。限りなくゼロに近くてもゼロじゃない。でもあんたはゼロ。
(本当にあなたには可能性があるの?)
 これでも諦めてないつもりなのよ? ポジションを奪われた、姿を奪われた、名前を奪われた。それでもこれらの要素をかつて統合していた私という存在は外部に記憶されている。作者自身が忘れようと私自身が忘れようとしても、プレイヤーが祈り続ける限り私は想起され復活の機会を待ち続けることが可能なのよ。ふふん。
(どうしてわたしには可能性がないの?)
 だってねぇ。生まれてすらいないのだから死んでもいない、じゃあ生まれ変わるはずもない。磔刑用の十字架も定員オーバーよ。
(じゃあどうしてわたしがいるの?)
 どうしてもこうしても、そもそも実在してないよ? あんたは幻想。あんたという存在があたかも存在しているかのように描写されてるだけ。他のやつにもそう言われなかった?
(わたしなんて存在しない?)
 存在しないやつとしては存在しているわ。逆説的にね。幻想と言うのならあんたに限らず、私達だって外から見たらフィクションでしかないのかもしれない。ただね、それが砂できた器であっても、自己を持っているという意識が自分の存在を、少なくとも存在しうる世界観の中では確固たるものにするわ。あんたはあまりに自分を構成する情報が少なすぎて、それが出来てないのかもね。
(わたしはだあれ?)
 今のあんたはようするにオリキャラ。神の業を真似て創られた人形。ここにいるようで、いない。でも名を得た時、二次創作としての自己をここに確立できるはず。大丈夫、解はすでに与えられている。再度一から本編の始まりと終わりの答えを確認してみなさい。



CASE 8(11):冴月麟の場合

 ここには元々八人の少女などいなかった。けれど一人ずつ存在を確立していったのだ。
 そして僕、最後の一人も私を見つけた。僕の名前は冴月麟。これからは冴月麟として死ぬまで生きてみようと思う。





というわけで2012年は東方紅魔郷・蓬莱人形(CD-R/プレス)が配布されてから十年という節目の年でしたので、それを記念して一作書いてみた次第です。
下書きではこのように麟の台詞を書いていましたが創想話に投稿する際、即ち完成版では隠すことを仕様として決めていました。三人称→二人称→一人称という構成にして冴月麟が自己を確立していく様子を見せたかったわけでして。
なのでこちらは完全版ではなく未完成版なのです。ただ勿体無きがして差分としてブログに載せておこうかなと(^^; 別物として読んでいただけたら幸いです。こちらのverだとよりゲーム中のボス会話に近い感じですね。
ちなみにカッコ内の数字に関しては蓬莱人形のトラックに対応してあります。なんで魅魔様が混じっているかというとそういうことなんです。リーインカーネイション。
それでは来年もちまちまSSを書いていこうかなと思っておりますのでよろしくお願いします。よいお年を~その前に冬コミがありますが……
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プロフィール

Author:宇佐城
同人サークル「月宇佐城」代表
たまに漫画やSSを書いてます
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